アマゾン奥地のシャーマンのもとで修行してみた①~偶然に身を委ねて~

旅/紀行

2018年某日、私はメキシコシティで知り合ったリマ近郊にあるペルー人の家に6日ほど滞在したあと、ペルーのアマゾン地帯にある「陸路では行けない世界最大の街」イキトスの空港に夕刻降り立った。

預け荷物がなかったので誰よりも先に空港を飛び出すと、目の前にゴツい男が立っていた。モトタクシーの運転手だ。

彼が提示した街までの運賃が相場の倍ほどだったので一度は無視したが、トイレに行って戻ってきたときに半値で交渉してきたので、彼にお願いすることにした。

アマゾンのジャングルに囲まれた街だが、雰囲気は東南アジア感のある普通の街だった。ただ、モトタクシーが腐るほど走っている。それもホンダばかり。こんなところでも日本製品は大いに活躍していた。

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運転手の彼が、名前や年齢を尋ねてくる。

フレンドリーに接して心象を良くしようとしているなと感じ、舐められないように踏ん反り返りながら答える。

「この街に何しにきたの?」

「アヤワスカを飲むためだ」

アヤワスカ(Ayahuasca)とは、アマゾン北西部で伝統的に用いられている強力な幻覚剤だ。ペルーの国家文化遺産に指定されている。

その2ヶ月前の夜、拠点とする安宿の屋上で、長期滞在者であるベネズエラ人のLeonardにこの存在を教えてもらって興味を抱き、そこから色んな旅行者から情報を集め、この街に辿り着いたのであった。

「アヤワスカを提供しているシャーマンの知り合いがいる人を知っている」

「どこにいるの?」

「街にいる。今すぐにでも案内できる。話を聞いてみるか?」

着いたのは、小綺麗で明るい観光案内所のような小さな店舗。

腹の出たオッサンが店から出てきた。事前に調べたネット記事では意外にもシャーマンは普通のオッサンだったという話がよくあったので、私のイメージしていたシャーマン像にソックリだと感じた。

運転手とともに、店の中に入る。

軽く説明を受けたあと、もっと静かなところで説明しようかと言われたので、ここで問題ないと伝えたが、セルバ(ジャングル)がどうこうと言うので興味をそそられ、結局移動することに。自分のテリトリーに持ち込む上手い手だなとのちに感心した。

そこからモトタクシーで10分くらい移動したところにあった家で、Luisと名乗るそのオッサンからさらなる詳しい説明を受けた。

彼のことをシャーマンだと思っていたが、そうではなかった。ただ、彼自身、アヤワスカを150回は摂取したことがあるという。

シャーマンは8種類いるだとか、アヤワスカも何種類もあるだとか、知らない情報だらけであった。

「うちではこの街に14もあるというアヤワスカセンターのような1週間1000ドルくらいの高額かつツーリスティックなものではなく、ガチのアヤワスカセレモニーをイキトスの外のセルバでやる。料金はアヤワスカセンターの約半分だ」

近年はアヤワスカツーリズムといって、アヤワスカの幻覚目当てにやってくる観光客が増えており、アヤワスカセンターなる商業施設が乱立している。そこでは大部屋で大人数でアヤワスカを摂取するという。

「うちはアヤワスカセンターとは違って、少人数で密なセレモニーを行う。そもそも街中にいるシャーマンは偽物だ」

本当にちゃんとしたところなのか確信は持てなかったが、気が付けば前傾姿勢で話を聞く自分がいて、いつの間にか「ここでやる」と決めていた。

1週間分の料金を支払ってから、早速彼とその16歳の甥とともにバスで出発した。

今はほとんどいないというスペシャルなシャーマンだったLuisの叔父は、別の次元へと消えていったという不思議な話をされた。半信半疑で耳を傾けた。

すっかり暗くなった頃、目的地に到着した。田舎の別荘地のような場所だった。

電気は通っていないようで、発電機で明かりを灯している。そこには大量の蟲。パラソル状の、藁でできた大きな屋根の下、蚊帳で囲まれた簡易的なベッドがある。

お手伝いの少年に「シャワーはこっち」と懐中電灯とともに歩いて案内されたのは、なんと池。

どんよりとしている。汚くはないが、魚がいるという。シャワーのある小屋でもあるとばかり思っていた。なんせ熱帯だから、この日も汗をかいている。近くのベンチに服を置いて、桶で水を汲んで、身体や頭を洗った。

いきなり凄いところに来たものだ。これから面白くなりそうな予感がした。

シャーマンは翌日来ることになっており、その場にはいなかった。その代わり、悲惨にも頭が禿げ散らかした静かな欧米系の男がいた。彼はベルギー人で、既にここに2週間ほどいるという。

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聞けば、これまで様々なドラッグを試す中でアヤワスカの存在を知り、この地にやってきたのだという。街で情報収集していたら彼と出逢ったのだそうだ。

彼は日記を書いていた。その大きめのノートは、小さな字が整然かつビッシリと埋まっていた。「自分が書いた以外の字があって読めない」などとLuisに言っていた。ヤバいんじゃないかコイツ、と思った。よく見ると目が虚で、浮浪者の雰囲気がした。まだ24歳だという。ドラッグ濫用と関係しているのだろうか。

Luisから色々話を聞いた。彼曰く、1日に1-2度の自然由来の質素な食事を摂るDieta(ディエタ / 食事制限)を最低3週間はしながら、アヤワスカを1週間摂取するというのがアヤワスカの一連の行程とのこと。つまりここで、3週間滞在する可能性が浮上した。しかしその場合、留学先の大学をサボることになってしまう。

また、彼が20年前にイキトスにやってきた毎日新聞記者の日本人とともに、インカ文明時代に築かれた地下トンネル「インカトンネル」を旅したという話は、半信半疑ながら興味深かった。彼曰く、ペルーには3つのピラミッドがあり、修行を積んだ者にしか行くことができないのだという。

歯を磨き、蚊帳に囲まれた二段ベッドの上に入り、携帯でメモを取り、眠りに就いた。

アマゾン奥地のシャーマンのもとで修行してみた②~修行の準備~
2018年、アマゾンのとある田舎で、シャーマンのもとでカオスな修行をした話。

2018.10

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