南米コロンビアを訪れる人に向けて、犯罪に巻き込まれないための心構えを、1年ほど滞在していた私自身の経験と複数の資料を参考にしてまとめた。
もちろん、こうした対策は、コロンビアに限らず世界中で通用することなので、海外に行くことのある人は目を通していただければと思う。
また、犯罪と一口に言っても色んな種類があるが、コロンビアでの邦人の犯罪被害の大半は「強盗」と「窃盗」。
誘拐やテロ、通り魔や強姦など、他にも危険は多く潜んでいるが、この記事では「強盗」と「窃盗」をメインに扱う。
とはいえもちろん、ここに記す対策や心構えは、自ずとその他の犯罪への対策にもなる。
特にアジア人は目立つ上に、旅行者である(カネを持っている)と思われるので、一層の注意が必要である。
犯罪対策を、被害防止と被害軽減に分けて説明する。
被害防止:被害に遭うリスクを下げる
被害軽減:被害に遭ったときのダメージを下げる
被害防止のポイント
夜間の外出を控える
夜は人が少ないので、犯罪者側からすれば好条件。自ずと犯罪被害に遭う確率は高まる。
首都ボゴタの旧市街周辺では、夜22時くらいになると、歩行者はほとんど見かけられない。
逆に安全なんじゃないかと思えるほどに過疎っているが、夜間に歩くと浮浪者風の人たちがカネをせがんでたくさん寄ってくる。
貴重品を不用意に取り出さない
財布を取り出せばパクられてしまう可能性は当然上がる。
あとを付けられることもある。
携帯や財布などの貴重品は見られないよう、不用意に取り出さないのが重要。
危険情報を把握する
日本の外務省が実施している「海外安全情報配信サービス たびレジ」などで、世界各地の危険情報などを知ることができる。(リンク先から登録可能。無料)
渡航先を登録すると、メールで危険情報などを知らせてくれる。
言うまでもなく、全ての場所が危険というわけではない。
治安の悪い地域については、外務省の危険度マップや、現地に詳しい人間から情報収集が肝要。
油断せず周囲を警戒する(キョロキョロしない)
慣れない場所にいると、ついキョロキョロしてしまうものだ。
しかし、現地に不慣れな観光客と思われてしまうとターゲットにされる可能性が高まるので、隙を見せないように落ち着いた振る舞いを心掛けたい。
人の大勢いるところで「つけられてる?」と感じたら、何気なく立ち止まって対象を視界におさめ、通り過ぎるのを待つ。
持ち物は肌身離さず携帯し、レストランなどでの食事中も、鞄などは目が届き、かつ取られにくい位置に。
なるべく単独で行動しない
現地に不慣れな人間は当然狙われやすい。
特に慣れないうちや、スペイン語が分からない人は、複数人で動くのが望ましい。
定型パターンの行動を避ける
犯罪系の人の中には、場当たり的にターゲットを選定する者もいれば、周到に準備をした上で犯行に及ぶ者もいる。
後者の存在を意識して、通勤・通学の経路や時間帯などを意識的にイレギュラーにするというの工夫は有用。
目立たない(質素な身なり)
コロンビアではアジア人は少ないのでかなり目立つ。
また、カネを持っているというイメージを持たれがち。
だからこそ、服装は華美なものはなるべく避け、カネを持っていない風の身なりを心掛ける。
強盗や窃盗は、実行する側にしてみても、リスクの高い行為である。
期待値が低ければ、実行する可能性は当然下がる。
華美なネックレスや腕時計はつけない方がいい。銃を突きつけられて奪われた知人もいる。
持ち物は少なめにする
持ち物が多いと、犯罪者側からすれば自ずと価値のあるモノが入っている期待が高まり、ターゲットにされやすくなる。
貴重品はなるべく携帯せず、カード類は必要なとき以外は持ち歩かず、現金は少額に留める。
パスポートや旅券は持ち歩かない。
「街を歩くときは手ぶらで」くらいの勢いでいるのが望ましい。
流しのタクシーはなるべく使わない
流しのタクシーは何度も使っているが、今のところ一度も危険な目に遭ったことはない。
が、メーターをオンにしないなどして、実際にボッタくろうとしてくる人はいるらしい。
夜はタクシーを使わないというコロンビア人は結構多い。
コロンビアではUberなどの配車サービスが使える。事前に行き先を入力するので使い勝手が良い。こちらの使用を優先することを勧める。
第三者の介在した飲み物に手をつけない
バーなどで飲み物に睡眠薬を混入されて、昏睡状態にされた上で金品を奪われるケースもある。
信頼に足らない人物に「これあげるよ」などと話しかけられても、うまくかわすべし。
リュックを身体の前に抱える
トランスミレニオ(赤く長いバス)などの混雑する場においては特に、チャックを開けられて中のモノを盗られる危険性が高くなる。
街中を歩くときは、リュックを前に背負っていると「貴重品持ってるな」と思われて狙われやすくなるという話もある。
しかし、トランスミレニオなどでは混雑時はリュックを身体の前に抱えているコロンビア人が多い。
南京錠などで鍵をかけるのも一つ。
道脇を歩くときは道路側に荷物を持たない
バイクなどがやってきて引ったくられる可能性を防ぐため。
日本でもこれは心掛けたい。
被害軽減のポイント
決して抵抗しない
強盗などに遭ったときは「抵抗しない」。命が一番大切。
一橋大の井崎さんは、手荷物を奪われ、取り返すために追いかけてしまった。
しかし、そうした犯罪系の人たちは銃や刃物を持っていることも多い上に、複数人で犯行に及んでいる可能性が高い。
刺激を与えない
犯行側も、リスクを背負って実行している以上、緊張状態にある。
刺激を与えれば、どんな行動に出るか分からない。
大声を出さない。
急な動きをしない。
武器を取り出すと思われるような素振りを見せない。
これらを心掛けたい。
犯人の顔を見ない
顔を覚えられたと認識され、強盗以上の危害を加えられる可能性が高まる。
相手の動きが見える程度に、顔はやや伏せ気味にするのが無難だろう。
貴重品は盗られにくいポジションに
例えば、ポケットの口の大きいズボンは避ける。
ズボンの下に薄手の短パンを履いてそのポケットに財布等を入れる。
腹巻きを使用する。
ジャケットの内ポケットに入れてメインのチャックを閉める。
などの対策が考えられる。
特に、トランスミレニオのような混雑する場においては、こうした対策を講じるのが望ましい。
所持品の分散保管(フェイク財布)
現金は2つの財布に小分けにしておき、いざ強盗に遭ったときに片方を素早く渡せるようにしておきたい。
ただし、あまりに額が少なければ激昂して危害を加えられる可能性もあるので、フェイク財布にも10,000-20,000ペソは入れておいた方がいい。
その他の対策
・クレジットカードは信頼できる店のみで使用。必ず目の前で使用させる。
・私服警官を名乗る者は信用しない。詐欺や恐喝の可能性がある。
走って逃げるのは?
強盗にナイフを突きつけられるなどしたとき、逃げ足の速さを自負する者は、思い切り走って逃げてはいけないのだろうか。
安全対策関連のセミナーをしていただいた日本大使館の方に質問したところ「状況による」とのことだった。まあそうですよね。
退路に確信が持てるならば、それも一つ。
ただし、街で不用意に走ると、警察や警備員が窃盗犯と勘違いして追いかけてくることがある。
実際、走ったことで警備員4人に囲まれたことがあった。
下手すれば正義感を発揮した誰かに危害を加えられるかもしれない。
コロンビアに限った話ではないが、リスクを回避/軽減し、素晴らしい滞在にしていただきたい。
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