今見えているものは既に古い。光が移動するのに時間がかかるからだ。
例えば秒速30万kmで移動する光が、30cm先にある見開いた本に反射して目に入ってくるまでには0.000000001秒かかる。
それに加えて網膜から視神経を通って脳で認識されるまでにも時間がかかる。
空を見上げればよく見える眼球内の硝子体に浮く赤血球やタンパク質ですら、すべては「過去」の映像であるということだ。
だから、今見えている星の中には既に存在しないものだってあるだろうし、既に存在しているのにまだ見えていないものだってあるかもしれない。
夜空で光り輝くものの中で一番明るいくせに、実は自らは光を発していないものな~んだ?そう、月だ。月は太陽の光を反射しているだけだ。そんな月は約1秒前のもの(地球から約38万km離れている)だけれど、その近くで光るあの星は100年前のものかもしれないし、あっちにあるあの星は100万年前のものかもしれない。
※アルタイルは17年前、ベテルギウスは642年前、肉眼で見える最も遠い天体である「さんかく座銀河」に至っては約300万年前。
その事実は、星空に光る北斗七星やオリオン座などの星座は平面で認識されるが、本当は三次元空間におけるジグザグの立体なのだということを教えてくれる。
つまり、星空を眺めるとき、我々は無数の時代を同時に眼中に収めているのだ。
100万光年先にあるあの星の近くにある惑星の誰かが、人類のいなくなった100万年後に我々を望遠鏡で眺めているかもしれない。
星空には、ロマンが詰まっている。
2020.05.15
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